社員がゆくぶらり渋ビル散歩〜日常に潜む渋いビルの魅力を発見〜

ぶらり渋ビル散歩〜日常に潜む渋いビルの魅力を発見〜

"渋ビル"という言葉を皆さんはご存知ですか?

初めて聞く方がほとんどかと思います。
実は、最近ひそかに建築ファンの間で話題になってきているキーワードなのです!

渋ビルとは...
高度経済成長期(1950〜70年代)に建てられた、街中にありふれた地味なビルのこと。 その中でも、渋ビルを探し愛でる『名古屋渋ビル研究会』の琴線に触れたビルを指すそうです。
ちなみにこの研究会は、建築家とグラフィックデザイナーのお二人で結成されています。

お二人は、すでに100点以上のビルを渋ビル認定されています!しかも、専門的な建築の豆知識からオリジナル渋ビル弁当のレシピ考案まで様々な活動をされています。
さらにそれらをまとめた『名古屋渋ビル手帖』が現在4冊も出版されています!

今回は、お二人のガイドで名古屋の高岳駅から中産連ビルを目指して、「ぶらり渋ビル散歩」に参加させていただきました。
このツアーは大ナゴヤツアーズさんの企画で、テレビでも紹介されています。
駅では今回のツアーマップとともに、なんと!渋ビル手帖創刊号と特製渋ビル缶バッジをいただき、ワクワクしながら出発です。

角丸とお悔やみ

高岳駅を出発して、いきなり現れるのは「東和高岳ビル」。

よーく見ると、窓の縁の折り返しとサッシの角が綺麗なカーブを描いています。これは、"角丸"という渋ビル定番デザイン。
実は数年前までは、この白い壁が黒かったそうです。

現在でもいい感じの佇まいですが、黒い時はよりシックな大人の魅力溢れるビルだったことでしょう。拝見できず残念...

東和高岳ビル
#タイル #水平性 #角丸

もう一つ、渋ビル定番のデザインがあります。それは、"水平連続窓"。水平に窓がひたすら連続している様子を指すそうです。

今回のツアーでもこの2つのキーワードは何度も出てきました。専門的な用語なので、覚えておくとちょっと自慢ができるかもしれません!

続いて、これも渋ビル?というコンクリートのとてもモダンな建物が出現!しかしマップの写真をよく見てみると...遺影写真になっています!
以前はタイルと水平性を持った素敵な渋ビルが建っていましたが、とうとう取り壊されてしまったそうです...
以前の写真を拝見しながら、昔の姿にみんなで思いを馳せ、参加者みんなでお悔やみポーズ。

現在の建物も現代的で素敵なのですが、それでもいつかコンクリート建築も渋ビルと言われるのだろうかと歴史を感じ少し感傷に浸りながら観賞しました。

天野屋
#タイル #水平性 #お悔やみ

こうして建築の専門用語と本当に独特なお二人の渋ビルの愛で方に、どんどん渋ビルワールドに引き込まれながら、ツアーは進んでいきます。その後も建物のラインが角丸の可愛らしい渋ビルや、タイルが素敵なレストラン付き渋ビルなど...

〜その他の角丸たち〜
#角丸 #角丸サッシ (右)/ #タイル #水平性 #隅切 #フォント(中央) / #角丸 #フレーム(左)

スチールサッシからアルミサッシへ移り変わっていった経緯やタイルの名前など、お二人の豊富な建築の知識とともに、実際に測りながら解説していただきました。

板チョコ?土偶?

こちらは"板チョコ" (お二人による命名)と呼ばれている渋やかビルです。

渋やかとは、渋ビルにより街が華やかになっている様子を表現する、渋ビル専用の褒め言葉のこと。

まさに色と窓の模様が板チョコのようですね!またこのビルにはもう一つ名前があり...それは"土偶"!!
言われて改めて見てみると、屋上の感じが土偶の顔に見えてきますね!街中に、板チョコや土偶が立っているかと思うと、渋やかという言葉通りなんとも街が楽しく見えますね。
さらに建物側面の屋上に隠れたところにあるしゃくれ(!)に目を奪われます。

終盤には、とっても美味しい喫茶店ボンボン(最後にご紹介しますね!)や、水平連続窓と垂直性のきれいな渋ビルが続き、ひたすら写真をパシャパシャ。

近江屋ビル
#渋やか #プレキャスト #塔屋 #しゃくれ #スチールサッシ

そしてとうとう!
今回のメインディッシュ"中産連ビル"です!

中産連ビル

中産連ビルは、渋ビルの中でも一線を画す素晴らしい建物です。上野にある国立西洋美術館を設計したル・コルビジェに師事したモダニズム建築の大家である坂倉準三氏の手掛けた建物です。

中産連ビル
#タイル #ポツ窓 #しゃくれ

今回はツアーということで、室内と屋上も特別に拝見することができました!

本当に素敵な建物なんですよ!

床の真鍮線で作られた模様から、ラウンジを支える木目の柱。この柱は木製ではなくなんと、コンクリートなんです。打ち放し仕上げと呼ばれる技法で、型枠に使われた杉板の木目が柱の表面に綺麗に残っています。

堂々と中心に立つこの柱の存在感に思わずうっとり...

この建物の魅力の一つ、縦横自由におかれた白枠の窓。

外から見ても圧巻でしたが、室内から見るとさらにこの建物の素晴らしさが感じられます。どのように室内を区切っても、部屋の雰囲気を崩さない計算し尽くされた絶妙な窓の配置にまたまたうっとり。
細部まで隙のない坂倉準三氏のデザインはさすがです。

屋上では、このビルの表情を作り上げているタイルを間近で見ることができました。このタイルは京都の有名な工房で焼かれたと言われているそうです。

ついつい質感を確かめてしまうのは、癖ですが、、、
タイルといえばツヤツヤの表面を想像しますが、中産連ビルのタイルは少しザラザラとしたマットな仕上がりでした。反射を抑えることで、より全体を上品な雰囲気にさせているような気がしますね。

素敵な味のあるタイルを身にまとった渋ビルたちがたくさんいます。今回のツアーでも様々な種類のタイルに出会いました。
一日中眺めていたいですよね!

ちなみに、ご存知の方もいらっしゃるでしょうが坂倉準三氏について紹介します。

建築家 坂倉準三
彼の師であるル・コルビジェは国立西洋美術館も設計した近代建築の旗手で、モダニズム建築の提唱者といわれています。
同じコルビジェの日本人の弟子には、前川國男、吉阪隆正がいます。この3人が並んでいたかと思うと、なんとも豪華ですよね。 
そんな坂倉準三は、建築だけでなく伝統とモダンを融合した住宅や家具など多岐にわたる人間のためのデザインを追求し、戦後の日本デザイン界に多大な影響をあたえ、国内外ともに評価の高い建築家です。

なんとそんな坂倉準三氏の作品は、中産連ビル以外にも気づかないところで私たちのまわりにたくさんあります! 新宿駅西口広場や東京日仏学院。名古屋周辺では、名古屋近鉄ビルや岐阜市民会館(彼は岐阜県羽島生まれだそうです)なども彼の作品です。

どれもモダニズムの素晴らしい建築作品です。近くにお立ち寄りした際はぜひご覧になってみてくださいね!

渋ビルツアーに参加して

名古屋渋ビル手帖を読んでいて、"ビルは生き物"という言葉が心に残りました。
このツアーでも、老朽化や安全性などの問題で管理ができずに取り壊されるビルが目に止まりました。
今までは気にしていなかった建物でも、名古屋の街の景色を作り上げている大切な文化財の一部なのだと実感します。
街のビル全てを残すことはできませんが、そこにあったという存在を記録し残していくことは、渋ビル研究会のお二人のように個人でも活動することができます。
空きビルや空きテナントなどもすぐ壊してしまうのではなく、このような活動が増えて、有効的に活用して守っていくことができるようになればいいと思います。

今回のツアーに参加して、いつもの街が少し面白く大切に見えるようになりました。
まだ引っ越してきたばかりの私ですが、今この時の名古屋の風景をこれからもしっかり記録して覚えていたいと思いました。

名古屋渋ビル研究会、大ナゴヤツアーズのみなさま、本当にありがとうございました。

最後に!美味しいあんトーストとバナナジュースです。喫茶店ボンボンで食べられます!あんもバナナも、ほのかな素材の甘みが生かされたとっても美味しいお味でした!
隣ではケーキも販売しているので、お土産にもぴったりです。

中産連ビルの中にも渋ビル研究会一押しのカフェがあります!

渋ビルに興味を持っていただけた方は、こちらからホームページにいけます。

名古屋渋ビル研究会
同級生2人組(建築家とグラフィックデザイナー)による名古屋の渋いビルを愛でるユニット。
●名古屋渋ビル手帖の主なお取扱店
名古屋渋ビル研究会オンラインショップ/丸善名古屋本店/Carlova360/ON READING/etc...
ホームページへ

オンラインショップでは、刊行されている手帖の他にもオリジナルグッズ(ノートやてぬぐい)も買えるので、よろしければご覧くださいね!

 

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