Theプロフェッショナルライフラインの災害被害軽減と一日も早い復旧のために 

R&Dセンター 久世 晋一郎
R&Dセンター
久世 晋一郎

日本はここ20年ほどの間に、東日本大震災や阪神・淡路大震災など大きな自然災害をいくつも経験し、巨大災害は決して他人事ではなくなっています。社会インフラ系のお客様との取引が多い当社では、GISなどを用いながら、自然災害によるライフライン被害を軽減し、一日も早く復旧するための調査・研究に取り組んでいます。 (写真提供:神戸市)

【Theプロフェッショナル】ライフラインの災害被害軽減と一日も早い復旧のために

私たちが住む日本は世界的にみても地震の多発国であり、1995年の阪神・淡路大震災以降、「防災」・「危機管理」といった言葉が世間のあちこちで取り上げられ、2011年に東日本大震災が発生、巨大災害は決して他人事ではなくなりました。さらに静岡県以西では南海トラフ巨大地震の発生が懸念されており、その被害規模は東日本大震災を大きく超え、内閣府の発表では最大で32万人が犠牲になるとされています。


社会インフラ系のお客様との取引の多い当社では、数年前より複数のお客様から防災・減災に関連するご相談を受けるようになりました。そこで防災・減災について正しい知識を得る必要が出てきたため、2012年より名古屋大学減災連携研究センターに受託研究員として参加し、研究活動を行っています。


私の担当は「ライフライン防災」であり、地震をはじめとする自然災害と社会インフラ被害の関係について、地理情報システム(GIS)や統計分析を用いて、マクロ的視点から明らかにすることを目指しています。


ライフライン防災というと、これまでは個々の施設・設備について、その物理的特性から被害シミュレーションを行ったり、各種の計測を行ってその強度や脆弱性を判定したり、必要に応じて対策を実施したりすることに主眼があり、そうした研究実績は豊富にあります。しかしながら、ライフラインが展開されている地域全体を俯瞰的に見るという視点がやや手薄のように思われました。


私はこれまで、GISを用いたエリアマーケティングなど、ある広がりを持った地域をマクロにとらえることを得意としてきたため、その視点をライフライン防災にも適用し、災害被害という面から見た地域の特性を明らかにしてみようと考えました。


現在は、過去の被害実績を、発生した場所の地域特性や自然条件、過去の成り立ちなど、自然的・社会的・歴史的要素をGISという一つの土俵に乗せることで関連付け、その要因の分析、さらには同様の被害が将来この地域で発生した場合に、どのような被害が起こり得るか、その考察にチャレンジしています。


GISとオープンデータを使用した液状化被害の分析画面

GISとオープンデータを使用した液状化被害の分析画面
(※「千葉県地質環境インフォメーションバンク」データを使用)


この作業を行っていきますと、自然条件の違いによる被害程度の差異はもちろんあるのですが、合理性や利便性を追求した人間の営みによって、結果として被害が増幅されているケースもままあることに気づかされます。住宅を増やすべく地盤条件の悪い場所に造成を行ったなどは、その典型例と言えるでしょう。


そもそも文科系出身である私は、工学系・理学系の研究者がほとんどを占める防災・減災分野において、果たしてきちんとやっていけるのだろうかという不安がいっぱいでした。しかしこれまで身に付けてきた得意技を生かすことで、ユニークな視点を持ち込めることがわかりました。また何より、防災・減災は文系・理系の別を問わない「総合科学」の一つであり、分野の壁を越えた「連携」が大切であることを実感しました。


自分たちの住む地域を、国を、災害から守るためにできることはほんのわずかかもしれませんが、そうした思いを同じくする人を一人でも多く巻き込んでいくことが、減災社会実現の第一歩と考え、日々の活動にまい進しています。


プロフィール

久世 晋一郎 (くぜ・しんいちろう) R&Dセンター

1974年、岐阜県生まれ。
1998年、神戸大学発達科学部卒業。
2001年、名古屋大学大学院人間情報学研究科修了。(専攻は経済地理学、農村地理学)
同年、ナカシャクリエイテブ株式会社に入社し、以後、『ビジネスGIS』、『データマイニング』、『最適化』等のノウハウを用いた新規ビジネスを展開している。
2012年7月より2016年3月まで名古屋大学減災連携研究センター・受託研究員を兼務。

加入学会

地理情報システム(GIS)学会、日本オペレーションズ・リサーチ(OR)学会、日本災害情報学会

講演履歴

学会・シンポジウム・セミナーなど

2003年9月: ビジネスGISセミナー (於:GIS会館[名古屋])
2003年10月: ビジネスGIS研究発表会2003 (於:東京大学)
2005年6月: ビジネスGIS研究発表会2005 (於:東京大学)
2005年10月: 第14回地理情報システム学会研究発表大会 (於:大阪工業大学)
2008年10月: AiAデジタルアーカイブ研究会 (於:AiA事務局[名古屋])
2009年10月: 第18回地理情報システム学会研究発表大会 (於:新潟朱鷺メッセ)
2013年9月: 日本オペレーションズ・リサーチ学会 2013年秋季研究発表会 (於:徳島大学)
2014年11月: 第23回地理情報システム学会研究発表大会 (於:中部大学)
2015年3月: 情報処理学会第77回全国大会 (於:京都大学)
2015年6月: 都市ガスシンポジウム2015 (於:イイノホール&カンファレンスセンター[東京]、ポスター発表)
2015年10月: 第24回地理情報システム学会研究発表大会 (於:慶應義塾大学)
2015年10月: 日本災害情報学会第17回研究発表大会 (於:山梨大学)
2015年11月: 日本地震工学会・大会-2015 (於:東京大学、ポスター発表)
2016年1月: 土木学会第6回インフラ・ライフライン減災対策シンポジウム (於:土木学会講堂)
2016年10月: 日本災害情報学会第18回研究発表大会 (於:日本大学)

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