Theプロフェッショナル無いものは作れ! 匠のワザ!

文化情報部 技術課 西村師匠
文化情報部 技術課
西村師匠

当社では、様々な形態の貴重資料のデジタル化を行っています。
こうした資料を適切に取り扱うためには、専用の治具(加工の際、資料の位置や動きを指示・誘導するために用いる器具)が欠かせません。治具は市販のものもありますが、市販品では当社が扱う様々な貴重資料への対応は難しいのが実状です。そのため当社では、資料や業務内容に応じて、市販の治具を改良したり、オリジナルの冶具を製作することで、貴重資料のデジタル化を安全かつ効率的に行っています。
今回の“Theプロフェッショナル”は、当社が誇る“専用治具”製作の匠である、大ベテランの西村さんに登場頂き、知恵と技術で、様々な困難に立ち向かってきた、匠の仕事術について語っていただきました。普段は、口数も少なく「できない」という言葉を聞いたことがない、様々な知恵を絞り解決してくれる真の技術者です。

【Theプロフェッショナル】無いものは作れ!

Q:入社されたのはいつごろですか?

昭和51年入社で定年退職まで31年間勤務し、その後も継続して働かせて頂いています。
前の会社が倒産した後に、入社試験も無く入社することができ、ラッキーでした。

Q:入社当時はどのようなことをされていましたか?

入社当時は、創業当時からの当社の生業であるマイクロ撮影業務を担当していました。その傍ら、レントゲンフィルムのマイクロフィルム化を商品化するための、市場調査や研究も担当しました。

この研究で一番苦労したのは、高濃度のレントゲンフィルムに写った微妙な"影"(病巣)を再現することでした。市販されている軟調の35㎜マイクロフィルムでは高濃度部やハイライト部の再現、銀塩の粒子が大きすぎて微細な再現が出来ませんでした。

そこで、微粒子の硬調の35㎜マイクロフィルムを使用することにし、現像液の調整により、レントゲンフィルムの微妙な"影"を再現することを考えました。現像液を構成する薬品を調合し、色々な現像液を作り、何度もテストしました。中には良好な結果を示す現像液もありましたが、液の持久性等の面で問題がありました。化学の得意な故伊藤専務とも相談し、苦心の末、143番目の試作で軟調再現に最適な現像液が開発できました。また併せて、撮影時のレントゲンフィルム表面の光の回り込みを防ぐマスク機構、及び自動ピント機構も完成させ、レントゲンフィルムのマイクロフィルム化が軌道に乗りました。その後も研究室の故安藤部長や後藤課長と共に色々な物を製作してきました。

西村師匠

Q:このころからモノ作りや、技術に対する研究熱心さが伺えますね。その後はどのようなことをされていましたか?

その後はカラーメディア事業部に異動し、主にグラフィックパネル製作業務を担当し、大型パネルの設計・スクリーン印刷・パネルの設置等を行いました。グラフィックパネルは、各種屋外看板・室内看板・防災無線電飾盤等、様々なものを製作しました。

また、地元の公立文書館に多数保存されている明治初期の和紙公図を閲覧に供するために、これらを複製することになった際には、数メートル角程もある大きな公図を撮影するために大変苦労しました。撮影治具として、横スライドのバキューム付装置とカラー調整用フィルター機構を考案し、何とか安全に撮影する目処がつきましたが、更に、それまで使用していたスイス製の複写用のカラーペーパーが生産ストップになる事態が発生しました。同じメーカーの別のカラーペーパーを使うしか手が無くなり、自動現像機のスピード調整機構や液循環機溝を大改良することで、乗り越えました。

Q:アーカイブ業務関連で作成したものを教えてください。
  • A1判スキャナーの改良

市販のA1判スキャナーの押さえ部分の改良を行ないました。資料の寸法がA1判よりもはるかに大きいため、懐を大きく取るよう工事用単管を利用して骨組みを作り、押さえ板が平行移動でき、且つ手元でスイッチが操作できるようにしました。

A1判スキャナーの改良

  • 資料撮影台の製作

アーカイブ対象の紙モノ資料(冊子や書状等)は多種多様で、経本等の長い冊子のための横方向スライド機構、厚い冊子のための台の上下とシーソー機構を考案し、撮影面を平面に保つためのガラスの上下押さえ機構、カメラ台・撮影ライトも設けました。

アーカイブ業務関連

  • 超厚手の綴じ資料撮影台の製作

超厚手の綴じ資料で、綴じを外せない資料のために片面撮影台を製作しました。片面撮影台は45°の角度から撮影出来るよう、綴じの根元まで薄板をスライドし1ページの平面性を保つためにファンによる樹脂静電効果で平面性を保ちました。また、ページの増加による資料重量の変化に対応するため台自体の角度を変更できる機構としました。

超厚手の綴じ資料撮影台の製作

Q:埋蔵文化財の整理関連で作成したものを教えてください。
  • 発掘出土品(遺物)洗浄機の製作

土器などの遺物を高圧洗浄機を使ってアクリルボックス内で洗浄出来るようにしました。オペレーターがアクリルに付着した水滴で、遺物自体の汚れが見えにくいという問題があり、高親水性(くもり止め水滴防止)シートを貼るようにしました。

  • 洗浄済み遺物乾燥室の整備

樹脂カゴを縦14段・横2列に並べた移動用キャスター付の乾燥用ラックを設計・製作し、木製骨組みとプラダン(プラスチックダンボール)シートで組み立てた乾燥室を整備しました。

埋蔵文化財の整理関連

  • 遺物注記マシーンの開発

土器破片は出土した場所でグループ化され、その情報を土器に直接印字する必要があります。遺物注記マシーンは、ドット印字するマシーンで、文字データ送信部と制御盤で構成されます。マシーンから出る微量の溶剤と、印字の際に気化する溶剤を排気ダクト・ファンで屋外に放出する構造としました。作業終了時にノズルの洗浄・インク回収ガターの洗浄が大変で、開発当初は、インクのズレ、ノズル詰まり等問題が続出しましたが、印字終了時の洗浄ソフトをメーカーに開発していただき、自動でスムーズな立ち上げが出来るようになりました。

遺物注記マシーンの開発

Q:様々な工夫があふれていますね。これらの製作のコツを教えてください。

機械的な物は頭のなかで形を描き、動きをシミュレーションして各部構造を決めて進めて行く。頭で描くには既存にある物をよく観察すること。形が描ける様になると自然とものづくりが楽しくなってきます。市場にある良いとされるものを調べ吸収することも大切にしています。

西村師匠の製作物

Q:仕事にあたる上でのモットーを教えてください。

「楽しみながら挑戦する」です。難しい状況に対して、「どうしてやろうか?」と考えて、それを克服することが何よりの喜びです。

西村師匠

後輩社員からコメント

Q:一緒に仕事をしていた時、何かアドバイスを受けましたか?

「器用貧乏にはならない様に」と言われたかな...

西村師匠と後輩社員

Q:印象に残る、西村さんが仕事に取り組む時の姿勢は?

常に最善を考えて作業しているところ

Q:習いたいことは?

ギリギリまで妥協しないところ

Q:これは真似できないと思ったことは?

判断力と器用さ。
車に乗ったら直ぐに眠れてしまうところ。(もちろん助手席で)

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ナカシャクリエイテブ株式会社

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