地理情報システム(GIS:Geographic Information System)は、地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術です。当社には、空間的な関係を視覚的にわかりやすい形で表現できるプロのチームがあります。
今回取材したのは、現在、交通・G空間事業室の陶さんです。GISのプロから見た空間情報の魅力を探ります。
交通・G空間事業室は、交通事業(鉄道・道路)技術者とGIS技術者が結集した部署です。ここで働いている社員はGIS技術担当として、GISデータの構築・加工、わかりやすいマップの作成、基盤図の整備・交通関連事業のサポートを行っています。
配属から5年になります。現在部署内の役割として、生産の効率化、GIS技術力の向上、GIS関連ソリューションの開発をしています。
大学は情報学専攻で、大学院では地域経済を専攻していました。
大学院で初めてGISを知り、GISの魅力と可能性を感じ、この関連の仕事をしたいと思いました。就職探しの際、「GIS」をキーワードで検索したら、ナカシャの求人があったので応募し、運よく採用していただきました。
日本に来る前は、特に日本に来る計画はありませんでした。しかし、中国に居た頃、テレビ、インターネットを通して、日本の文化、風習など様々な情報に触れ、日本に興味を持っていました。偶然の機会で、おじさんの友人の子供が日本に留学しようとした際、「一緒に行かない?」と声を掛けられ、「自分の目で日本のいろいろを確かめたい、日本の文化、技術を学びたい」と思い来日しました。
最初は国交省国土数値情報データ整備の一部を担当しました。今は新しいGIS技術の取り込み、GIS関連ソリューションの開発を担当しています。
技術力を高めたい人、新しいことに挑戦したい人が合っていると思います。
いくつかの案件を担当しました。
例えば、国土交通省の数値情報データ整備業務です。交通流動量、パーソントリップの様々な統計データから、必要なデータを抽出、結合等の処理を行い、指定規格のGISデータを作成する仕事です。
また、農林水産省の農業基盤データ分析業務もあります。農業基礎調査、農業センサスの統計データを加工し、必要な説明変数と被説明変数などのパラメータを絞り出したうえで、分析を行い、ArcMapを用いて分析結果の視覚化を行い、出力図を作成する業務です。
更に、携帯キャリア会社様のハザードマップ作成業務も担当しました。内閣府から公開された南海トラフ被害想定のデータを基に、GISデータを作成し、ハザードマップを作成しました。
この仕事の一番面白いところが、「空間」データを扱えることだと思います。
「名称」、「性質」、「種別」、「数量」などの「非空間」データに「空間」という要素を加えることで、地図上での視覚化、空間的な解析が可能になります。その価値が何倍にも増えると思います。普段見えなかった情報も見えたりしますし、普段難しいと思ったことも簡単にできるようになります。
空間データを自由自在に扱えるには、それなりの知識とノウハウが必要となります。柔軟に空間データのフォーマット変換、属性加工、空間解析できるところが1番の強みだと思います。
当社で受注した現場調査の仕事で、調査箇所が数千箇所ありました。調査箇所を図面とリストで確認する場合、場所を特定するのに時間がかかったり、視認ミスを誘発してしまいます。そこであらかじめ、調査箇所のkmlデータを作成し、調査担当者が現場でリアルタイムに自分の位置と調査箇所を確認できるようにしました。タブレットのGoogleEarthに表示し、GPS機能による現在地表示によって、調査箇所をすばやく特定することができ、効率化に繋がりました。
農林水産省農業基盤データ分析の仕事で、分析結果の視覚化に工夫をし、お客様、アドバイザである農業の専門家の先生に見せた際、「分かりやすいね」とお褒めの言葉をいただきました。決して難しいことではありませんが、見せ方を変えるだけでお客様が大満足でした。どんな仕事でも、"お客様が求めているものは何か?"を常に考えて仕事をしていくことが、どんなに素晴らしい技術を使ったことよりも重要だと思いました。
GIS、空間データベース、Pythonあたりですね。
Pythonはオープンソースのプログラミング言語であり、誰でも無償で使用することができます。文法、書き方が他の言語よりすっきりしていて、同じ機能を実現する場合、Pythonのコードは少ない行数で済む場合が多いです。また、どんなデータ型でも格納できるリスト構造を持っていて、これはGISデータの格納に適している構造です。更にリストを追加、抽出、結合するなどの操作も豊富で、標準で付いています。
Pythonには豊富なサイトパッケージが存在します。組み込むだけで様々な目的を実現できます。 現在主流となっているGISソフト、ArcGIS、QGISでは、Pythonを標準言語として組み込んでいるので、GISの世界ではPythonは欠かせない存在となっています。
PostGISなどの空間データベースが面白いと感じています。空間データベースでは、空間データと非空間データを同じように、SQLによる抽出、結合ができ、更に、空間データ特有の距離、面積計算、重なり、含む等の空間演算も空間データベースの組込み関数によってSQL文で実現できます。目的別のデータセットをたくさん用意しなくて済みます。大量空間データを扱う際の自由度がかなり向上しますので、"もっと早く知っておけば!"と正直思いました。
PostGISは非空間データベースPostgresqlの空間拡張版です。
現在主流の商用データベース(MS SQL Server、Oracle)でも空間データを扱えますが、有償であるため、一般ユーザーは利用しにくいのですが、PostGISはオープンソースで誰でも無償で利用できます。OpenGISコンソーシアム(OGC)標準に準拠していて、QGISなど同じくOpenGISコンソーシアム(OGC)標準に準拠して作成したGISソフトとの親和性が高いです。
PostGISの一番の魅力はやっぱりSQLクエリと空間演算の両方を持っていることです。SQLクエリで検索した結果に対して空間演算、または空間演算の結果をSQLクエリの条件としてデータを抽出するなどのことができます。このような機能は多くのGISソフトでもできます。しかし、大量データを処理する場合、PostGISのほうが圧倒的に有利な場合が多いです。例えで言うならば、A地区にある建物を抽出する場合、GISソフトで処理する場合、日本全国の建物を読込んでからA地区にある建物を抽出するのに対して、PostGISは最初からA地区の建物だけを読込むことができます。またSQLクエリが使えるということは、複雑な条件でのデータ抽出、本来複数のステップで実現するデータ抽出をより簡単に行うことができます。例えば、A地区で面積が最も大きい100件の建物の抽出などができます。
統計、点群解析に注目しています。正直、点群自体に関しては、全く未知の世界です。但し、現在3Dモデリングにおいて、点群は重要なツールと感じております。これから点群についていろいろ勉強していきたいです。
1つの問いに対して、必ず1つの回答だけではありません。1つの角度からしか考えないと、考え方も狭くなってしまいます。常に新しい技術を勉強し、新しい方法で問題解決をするようにしています。例えば、 現在、商用・非商用を問わず、GISでできることは大体似通っていますが、得手不得手を分かっていて使いこなすことが重要です。ArcGISでは大量データ処理の安定性、QGISではGoogleMap等を背景にできたり、オープンデータの積極的な活用、豊富なプラグインの充実があります。 また、技術の進化により、データ作成の速度、精度が大きく向上しました。それに伴って、データの容量も昔と比べられないほど増え続けています。大量なデータを効率よく扱える手法や知識の勉強をしています。
新しい知識、手法を勉強し、GIS業務の更なる効率化を図ります。また、新規のGIS業務を積極的に開拓していき、「空間データ」の付加価値を高めていきたいです。会社と自分自身両方プラスなるように、楽しく仕事をしていきたいです。
※2020年1月時点
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