減災中部ライフガードTEC2016:出展内容

中部ライフガードTEC2016:出展内容

【1】 活断層地震

熊本地震に学ぶ、地震による土砂崩壊の危険

4月に発生した熊本地震では、地震の影響で阿蘇大橋を中心とする山間地の斜面が多数崩壊した。南海トラフの被害想定では、津波、液状化、建物倒壊の被害に目が行きがちだが、熊本と同様の土砂崩壊が起きうる箇所も少なくない。そこで、愛知県下の鉄道、高速道路への影響を知るため、熊本地震の被害を参考として、同様の危険に見舞われる箇所がないかを確認する。

GIS主題図で分かったこと

  • 阿蘇大橋周辺の土砂崩壊地分布から、活断層の線に沿う形で、"土砂災害危険箇所※"に指定された箇所で、多くの崩壊が起きていることがわかった。
  • 震央からの距離や、ボーリングデータN値、震度には相関が見出されなかった。
  • 上記2点から、愛知県下の鉄道・道路網と重ねると、幸田町の深溝断層周辺、豊田市・瀬戸市境界、岡崎市の藤川~本宿が抽出される。

使用したデータ≪提供元≫
・国土数値情報≪国土交通省≫
・南海トラフ巨大地震被害想定データ≪内閣府 南海トラフの巨大地震モデル検討会≫
・熊本地震土砂崩壊地ポイント≪国土地理院≫
・熊本地震震度分布≪産業技術総合研究所 地質調査総合センター≫
・都市圏活断層図データ≪国土地理院≫
・愛知県東海地震・東南海地震・南海地震等被害予測調査データ≪愛知県≫(非公開データ)
・地理院地図≪国土地理院≫

 

【2】液状化被害

東日本大震災に学ぶ、液状化被害の発生要因

2011年の東日本大震災では、千葉・茨城県をはじめ複数の地域で液状化被害が発生、水道などのライフラインが長期間断絶した。
液状化被害の想定には、現代的な知見が重視されるが、実はそれと同程度に、過去地形に関する考察が重要である。

GIS主題図で分かったこと

  • 千葉県香取市中心部の水道管継手被害箇所を、GIS上にて明治時代前期の古地図と重ね合わせると、そのほとんどが明治時代には利根川の中に位置していたことが分かった。
  • 上記をモデル化して愛知県にあてはめた結果、木曽川左岸の低地を中心として、香取市と同様の液状化被害が想定される地域が抽出された。

※本内容は、名古屋大学減災連携研究センター・ライフライン地盤防災寄附研究部門の北野哲司寄附研究部門教授と共同で行った研究成果に基づいています。なお、当該研究の一部はJSPS科研費25282118の助成を受けたものです。

使用したデータ≪提供元≫
・国土数値情報≪国土交通省≫
・明治前期の低湿地データ≪国土地理院≫
・明治期の水部データ≪国土地理院≫
・数値地図25000(土地条件)≪国土地理院≫(販売データ)
・第一軍管区地方2万分1迅速測図原図≪(独)農業環境技術研究所≫
・地理院地図≪国土地理院≫
・国勢調査データ≪総務省「e-stat」≫
・千葉県地質環境インフォメーションバンク≪千葉県≫
・液状化被害箇所データ≪千葉県香取市HP≫
・水道管被害箇所≪千葉県香取市水道工務課≫(非公開データ)
・愛知県東海地震・東南海地震・南海地震等被害予測調査データ≪愛知県≫(非公開データ)

 

【3】津波BCP

南海トラフ巨大地震津波被害予測から行動を計画する

昭和東南海地震から約70年活動が見られなかった南海トラフ上で、 2016年4月に地震が観測され、南海トラフ地震への影響が危惧されている。この地震において津波が発生すると予測されている名古屋市沿岸部には、大型の設備を持つ工場や企業など産業地域が広がっている。東日本大震災では沿岸地域で漁業や工業を中心に甚大な津波被害が発生した。

この主題図では、南海トラフ巨大地震による津波被害予測を元に、名古屋市沿岸部の製造業の従業員避難行動を考えるための要素を視覚化する。また自社設備の地図を用いたリアルなオリジナルハザードマップやBCPワークショップなどを通して我が事として捉え行動を計画する手法を提案する。

GIS主題図で分かったこと

  • 名古屋市沿岸部の津波浸水予測エリアには、多くの事業所とサプライチェーンの事業所が立地していることが分かる。
  • 事業所近隣の津波避難ビルや医療機関、緊急輸送道路などの情報を把握し、避難行動を計画できる。

使用したデータ≪提供元≫
・国土数値情報≪国土交通省≫
・南海トラフ巨大地震被害想定データ≪内閣府 南海トラフの巨大地震モデル検討会≫
・地理院地図≪国土地理院≫
・津波避難場所≪各自治体HPより≫
・航空機産業関連企業≪各企業HPより≫
・e-stat経済センサス≪総務省統計局≫

 

【4】機械学習を用いた旧地名の地形分類

旧地名から災害リスクを予測する

日本の古い地名には、先人たちが災害から身を守るための教訓を込めて、その場所の土地の成り立ち、地盤の強度、被災の経験などを文字に託し、つけられたものが多い。河合・福和・護・飛田(2009)※はそうした地名の付け方と実際の地震ハザードとの関係を、バス停名称をもとにして明らかにした。

今回は、農林業センサスの調査単位に用いられる「農業集落名」のカバー率と、高度成長期以前の旧来地名を継承していることに着目し、機械学習の分類機能を用いて、地名からその集落の地盤の硬軟を推定する。

GIS主題図で分かったこと

  • 愛知県の農業集落データを用いた分析により、地名から点数化した硬軟の度合いと、ボーリング調査データから取得されたN値とを比較した結果、県西部の平野部には軟弱かつN値も小さい集落が他地域と比較しても多いことが分かった。
  • 東日本大震災時の液状化被災地である、千葉県香取市で同様の分析を行ったところ、実際に液状化被害に見舞われたほとんどの集落が、地名から「軟弱」と判定された。
  • 農業集落名による地名判定と旧河道の重ね合わせによって、液状化被害を予測できる。

使用したデータ≪提供元≫
・地理院地図≪国土地理院≫
・農業集落データ≪総務省「e-stat」≫
・数値地図25000(土地条件)≪国土地理院≫(販売データ)
・液状化被害箇所データ≪千葉県香取市HP≫
・ 愛知県東海地震・東南海地震・南海地震等被害予測調査データ≪愛知県≫(非公開データ)
【※参考文献】
河合真梨子、福和伸夫、護 雅史、飛田 潤:地震ハザードの説明力向上のための地名活用に関する研究 : 地形に由来する分類方法の提案と活用可能性の検討、日本建築学会構造系論文集 74(636)、2009年、pp.409-416.

 

【5】火災被害

インフラ施設が周辺環境から受ける火災リスク

巨大地震が発生した場合、二次災害として大規模な火災が発生することが、関東大震災、阪神・淡路大震災の経験からわかっている。

こうした火災が交通路の沿線で発生すれば、その影響によって、長期の運休、通行不可を強いられる可能性がある。

今回、愛知県内の主要な鉄道沿線の影響を確認するため、沿線周囲300m以内の「建物密度」と「木造二階建て家屋割合」の二つの指標を可視化し、大規模火災発生の危険性が高いエリアを抽出した。

GIS主題図で分かったこと

  • 旧市街地などでは建物密度、木造二階建て家屋割合がともに高くなるメッシュ(赤い着色のメッシュで、数値が50%以上など)が多い。
  • これらエリアを中心に、交通路との間に、十分な幅員の沿道があるかどうかを確認することで、火災リスクを軽減できる。

使用したデータ≪提供元≫
・国土数値情報≪国土交通省≫
・南海トラフ巨大地震被害想定データ≪内閣府 南海トラフの巨大地震モデル検討会≫
・愛知県オープンデータカタログデータ≪愛知県≫
・地理院地図≪国土地理院≫


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