減災過去から学び、未来に備える 『歴史地震』が命を救う!?

過去から学び、未来に備える 『歴史地震』が命を救う!?

みなさんは愛知県が地震がよく起こる地域だと思われますか?

愛知県はあまり地震が発生しない安全な地域であると多くの方が感じているのが現状の様です。しかし、実際に歴史を振り返ると全国で大きな被害があった20の地震の内3つの地震(濃尾地震、東南海地震、三河地震)が愛知県で2000人ちかくの被害が発生した地震です。上記のようなことから、どうも愛知県は地震が少ない安全な地域ではないようです。だからこそ、地震について正しい知識を身に付け、対策をとっておくことが重要になります。

歴史地震研究とは?

今、地震災害について何を考え、何に備えるべきなのかを、過去の歴史や教訓から読み解いていく研究を歴史地震研究といい、理学・工学・歴史学・社会学・防災教育など各方面から研究が進んでいます。歴史地震は近代的な観測機器の無かった時代で、古文書、災害記念碑などの記録に残された過去の地震のことを指します。歴史地震の調査研究は将来起きると想定される地震の予測など防災上、欠かすことのできないもので、プレート間巨大地震の発生周期などを論ずる地震学の一分野であり、ある地域の地震災害の正確な評価を行うためには、地震により開放されるエネルギーを見積もる必要がありますが、計器観測が始まって以来の地震のみではデータの蓄積として不充分であり、歴史地震研究の必要性が発生します。

研究活動 ~1945年三河地震~

1945年1月13日に三河地域を襲った三河地震では、深溝断層が幡豆山地の幸田町にできました。しかし、実際に多くの死者が発生したのは、矢作川流域の現在の西尾市周辺のエリアでした。このように、地震の被害の影響は震源からの距離だけでなく、地盤の影響が大きいことが分かります。

三河地震の特徴

  • 1ヶ月前に東南海地震が発生していたこと
  • 戦時中であったこと
  • 全壊家屋数に対して、死者数が多いこと

本研究の特徴

  • 元データに立ち返ったデータ整理(1985年名古屋大学教授 飯田先生以来初)
  • GISによる市町村被害の震度分布図化
  • 死者数を全壊数で割った指標Nk値で被害を分析

結論

  • 市町村単位の震度分布図では、東南海地震(海溝型地震)でも三河地震(直下型地震)であっても地盤条件による被害が大きいこと(軟弱地盤の平野では震度が高く、丘陵地では震度が低い)

三河地震の震度分布図

三河地震の震度分布図

防災教育

今住んでいる地域の土地の成り立ちや歴史を知ることが防災・減災の第一歩ではないかと考えられます。例えば昔、本当に島だったから現在の地名に島が残っている地域や、昔は川があったから欄干が残っているけれど現代では道路で面影もない、なんてことはよくあります。だからこそ、今住んでいる地域がどのように形成され、過去にどのような場所であったのかを知ることで、どういった備えが必要なのかが分かってきます。ハザードマップや防災ガイドはこういった視点を変えて観察することや気づきを与える重要なツールであると考えています。

  • (事例)幸田町ハザードマップ

研究成果の実用例として市町村が制作するハザードマップへの活用がある。県中南部に位置する愛知県幸田町様が制作された「地震防災ハザードマップ」は、クイズやキャラクターを用いて防災教育に着眼した内容を盛り込むなど"捨てられないマップ"をコンセプトにされています。中でも、南海トラフ巨大地震の被害想定とともに、三河地震の災害史やその被害を今に伝える史跡(断層や石碑)の位置などを盛り込み、地図を通じて地域の歴史や防災意識を高める役割を担っています。

過去の記憶を現在の行動に活かすための鍵となるのが位置情報=地図です。地域の災害の歴史や教訓が、地図によっていつ自分に起こるかわからないという我が事感に重なり合います。まさにその地域の「捨てられない記憶」としての提案です。

愛知県幸田町「地震防災ハザードマップ」(表紙と内容の一部)

愛知県幸田町「地震防災ハザードマップ」(表紙と内容の一部)

 

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