近年注目が高まっているCLAS測位(センチメータ級測位補強サービス)は、みちびき6号機の打ち上げ(2025/2/13に静止軌道上に配置成功)を経て、いよいよ来年から本格運用が始まります。
CLAS本格運用に先立ち、弊社が主に使用している測位手法であるネットワークRTKとの比較検証を行い、CLASの現時点での精度や安定性を確認しました。
また、L6信号対応アンテナの性能差が測位結果にどのような影響を与えるかも、重要な検証ポイントのひとつです。
本記事では、都市部における遮へい環境と見通しの良い環境の2つのゾーンを走行ルートに設定し、それぞれの条件下でのCLASとRTKのFIX率・測位ロスト・測位精度を比較した結果を紹介します。
受信機は「GNSS-BeatBox」を3台使用し、CLAS測位用1台、ネットワークRTK用2台で測位を行いました。
アンテナは、L6信号に対応した「Harxon HX-CSX601A」と「u-blox ANN-MB2-00」を使用しています。
vol41_01_受信機とアンテナ |
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撮影車両の屋根上に、「HX-CSX601A」と「ANN-MB2-00」を設置しました。
vol41_02_アンテナ設置 |
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名古屋高速「吹上西IC」から名二環を経由し、「東別院IC」までの区間で測位検証を行いました。
吹上西ICから名二環、再び名古屋高速に接続するまでの前半区間は、半地下やトンネルが断続し、GNSS測位に厳しい環境が続きます。
一方、名古屋南JCT以降の後半区間では空が大きく開け、測位条件の良い環境が続きました。
この検証では、前半を「遮へい多発ゾーン」、後半を「見通し良好ゾーン」として、
それぞれの測位結果を比較・評価しています。
vol41-03_ゾーン一覧 |
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画像:vol41-04_ルート図 |
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CLASとネットワークRTKを比較すると、どちらも同じアンテナ「HX-CSX601A」を使用しているにもかかわらず、RTKのFIX率は93.5%、CLASは58.8%と大きな差が見られ、ネットワークRTKの方が高精度であることがわかります。
また、ネットワークRTKにおいては、使用アンテナに関係なくFIX率がいずれも95%前後と安定しており、空が開けた条件下ではアンテナの違いが測位精度に大きく影響しないことも確認されました。
vol41-05_ゾーン一覧 |
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vol41-06_ルート図 |
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半地下やトンネルが連続する遮へい多発ゾーンでは、緯度・経度が取得できないロスト時間が多く発生しました。
CLASとネットワークRTKを比較すると、RTKのFIX率および測位可能時間のいずれにおいても、ネットワークRTKが明らかにFIX率が高いことを確認できます。
アンテナの比較では、トンネル出口での測位復旧速度や、半地下における測位継続時間などの観点から、「HX-CSX601A」の方が総合的に優れている結果となりました。
vol41_07_遮へいルート図 |
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vol41_08_遮へいFIX表 |
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現時点では、CLASを積極的に採用する状況には至りませんが、本格運用※2が始まったタイミングで、再度その実力を検証してみたいと考えています。
※1 RTK固定基地局の位置やWi-Fiルータの受信感度の条件が満たされている場合。
※2 全7基が打ち上がり、かつCLAS補正サービスに対応した受信機が発売されたタイミング
今回の記事ではふれていない知見もありますので、「もっと詳しく聞いてみたい」という方は、お気軽にご連絡ください。
▼この記事を書いたひと
R&Dセンター 渡邉 裕樹
位置情報、GIS関連が得意です。この道20年やってます。
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