AR/VR/画像処理【機械の目 Vol.1】4K動画で構造物を撮影する

【機械の目 Vol.1】4K動画で構造物を撮影する

この記事では、最近は安価に入手できるようになった4Kカメラを使って、 "土木構造物や設備を撮影するとどんなことができるのか?"に迫ります。


高精細な画像へのニーズ

これまで360VRの活用という視点で記事にしてきました。

管理に近い立場からは"全体を漏れなく記録したい"といったニーズがありましたが、 一方で現場で構造物を目視している立場からは"詳細に見たい"ニーズがあります。


過去の記事はこちら:

現場に実際に足を運んでいるのですから、"漏れなく記録されていること"よりも "自分が目で見たものを正確に残したい"といったことでしょうか。

これまでも現場では、まさに自分が目で見たもの(一部では目では見えないものまで)を記録する目的で、デジタルカメラが重用されてきました。
GPSによって位置情報を記録できるカメラや、ステレオ立体視で簡易的な計測が出来るカメラ、サーモグラフィと写真をオーバーレイできるカメラ... 自分が見ている対象以外の空間全体を写し取るカメラとして360カメラがあります。

高速道路構造物や鉄道、河川の土木構造物では、長大な面積を見て回らなくてはならず、"リアルを写し取る"ことには労力も時間も掛かります。
そこで多くの現場では、デジタルカメラによるスポット画像とは別に、映像記録を保存しているようです。

少し前までハイビジョン(1080*720)、フルハイビジョン(1920*1080)といった解像度が使われてきましたが、最近は、4K(3840*2160)のビデオカメラを安価に入手できるようになりました。
フルハイビジョン比で4倍の画素数があり、構造物を撮影した際の解像感には驚きます。


例えば...路肩に落ちている輪ゴム一本まで見えます!

4K画像は輪ゴム一本まで見えます



4K高精細だけでも不十分な理由

せっかくの4K解像度であっても、十分な光量が無かったり、ピントが甘かったり、手振れが発生したり、モーションブラーが発生してしまっては解像感のある画像を得られません。

鉄道、道路、河川などの長大な構造物を巡視点検を省力化する目的のため、車載撮影やドローンからの空撮を想定します。
これら移動する物体からの撮影では、三脚で固定して静止状態を作ったり、長時間露光で光量を稼ぐなどの手法を採れません。

シャッタースピードはできるだけ早くモーションブラーの発生を抑え、転送ロスもなく、ローリングシャッター現象を抑制する必要があります。
現場作業においては、バッテリーの持続時間や、熱暴走、耐環境性、撮影しながらの給電なども考慮しなければなりません。

R&Dセンターで今採用しているカメラは、SONY FDR-AX700です。
最大の理由が、高速なオートフォーカス、タッチAFと高速なシャッタースピードです。
※ファストハイブリッドAF、位相差AF枠、タッチAFなど、フォーカス機能が盛りだくさんです。
詳細はこちら

SONY FDR-AX700



撮影の秘密(ローリングシャッター現象対策)

モーションブラーとローリングシャッター

高速移動撮影においては、モーションブラーやローリングシャッター現象の存在を避けて通れません。

当初、デジタルカメラのタイムラプス撮影や連続シャッター機能での撮影を考えていましたが、長時間連続シャッターを切り続け、書き込みの転送ロスを回避できるデジカメは存在せず、 ビデオカメラのフレームを静止画に切り出す手法に切り替えました。

耐環境性能やバッテリー問題、オートフォーカスの追従性...など、ビデオカメラの技術は、多くの課題を解決してくれます。


久門氏への相談

高速移動しながらの撮影について、写真道場を経営されているカメラマン"久門易(くもんやすし)氏"に助言を頂きました。

「一眼レフを使った高速移動体の撮影でどの程度のモーションブラーが発生するのか?」
「ローリングシャッターを抑制するにはどうしたら良いか?」

モーションブラーは高速なシャッタースピードで、ローリングシャッター現象の抑制はカメラ方向の変更で対応します。
通常横向きでカメラを設置するところ、縦で撮影するとローリングシャッター現象を抑制できます。

SONY FDR-AX700を縦で撮影する



ビデオカメラの選定

九州支店に勤務する当社社員K岡がSONYのビデオカメラを使い、JR九州在来線の沿線から70キロ程度で走行する鉄道車両を撮影したところ、明瞭な静止画を得られることを確認できました。
またK岡は、高速道路で車載動画を撮影し、どの程度のシャッタースピードでどの程度明るく映るかなどの検証をしました。

結果、SONYが出している民生機ビデオカメラのフラッグシップ機であるFDR-AX700を選択しました。

R&Dセンター(現在は新規事業開発部で活躍)のS間が更に、対象との離隔距離と撮影範囲の関係や、実際に高速道路、自動車道で経験値を蓄積していきました。



実際に撮影した結果

高速道路側面構造物(時速70-80キロで撮影)

FDR-AX700は、高速道路で70-80キロ/h走行しながら、側面を撮影する際、1/4000のシャッタースピード、ISO値160でも十分な明るさを得られるセンサーを持っています。

下は弊社で撮影したサンプルです。

  • 高速道路 路肩
  • 高速道路 路肩

  • 高速道路 壁高欄
  • 高速道路 壁高欄

  • 高速道路 法面
  • 高速道路 法面

対象との離隔距離が1メートル程度しかない場合は、幅0.83メートル x 高さ1.24メートル程度まで写ります。

離隔距離が4メートル程度の場合は、幅3.30メートル x 高さ4.95メートルまで写ります。

離隔距離違う場合の高さ比較



動画再生はVLC

4K動画を拡大したりフレーム単位で閲覧したり、キャプチャして部分的に静止画保存したり...といった目的のためには、VLC(VideoLAN)メディアプレイヤーがおすすめです。
ここからダウンロード(無償)できます。

  • 拡大再生
  • VLC拡大再生

  • コマ送り
  • キャプチャ保存


4K動画の活用

4K動画を加工することで、様々な活用が可能になります。

以降、4K動画を活用する具体事例を別記事として紹介していきます。


  1. 長尺ラスター
  2. 映像の時間軸を繋げることで、長尺の静止画を得る。


  3. フォトグラメトリ3Dモデル
  4. 移動視差を利用してフォトグラメトリで3Dモデルを作成する。


  5. 高精細な静止画をディープラーニングの学習データとしての利用
  6. 撮影した動画のフレームをすべて高精細な静止画に加工して、ディープラーニングモデル作成用の学習データを作ります。



 ▼この記事を書いたひと

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R&Dセンター
松井 良行

R&Dセンター 室長。コンピュータと共に35年。そしてこれからも!


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