「遊間」とは、鉄道レール間に設けられる隙間のことで、気温によるレールの伸縮や、列車の通過によるレールの動きを吸収するのにある程度の隙間が必要といわれています。
遊間に隙間がないと、レールが曲がったり破損したりするリスクが高まりますし、広いと列車通過時の衝撃が大きくなり、乗り心地への影響やレールや車輪に損傷が発生する恐れがあります。
鉄道保線に共通で使える物体検出AIモデルのテーマを選定する中で、レールの温度変化による膨張・収縮によって変化する遊間の確認は、レールの破損や脱線を防ぐために重要であると考えました。
物体検出AIモデル「遊間」が、鉄道の安全運行とメンテナンスの効率化に寄与する"重要な目標物"として、選定しています。
※その後、"遊間"に番号を振り、枕木の位置を表す"IDとしても"重要であることを知りました。(枕木セット番号=遊間のある位置にペンキ書きで番号を記入している)
保線設備には、レールクリップ、犬釘、継ぎ目板、レールボンド・・などの構成部品がありますが、どれも"遊間"の間隔と大きく関連するものばかりです。これらの目視点検を代用する注目箇所として、"遊間"の検出をAIで自動的に行うことには意味があると考えます。
物体検出には、列車先頭に下向きに設置したカメラからレール・枕木を画角の中心とした画像を使用します。カメラはなるべく下向きに設置しますが、列車内のガラスに内側から設置するので、視点が斜めになることは否めません。レール・枕木の視認性を向上させるため画像の正規化を行い、斜め視点の撮影画像を真上からの視点に近づくよう加工しました。これにより、レール・枕木画像の見やすさが大幅にアップしています。
(鉄道列車内の撮影風景:全景)
(鉄道列車内の撮影風景:レール・枕木用カメラ)
(レール・枕木画像:正規化前)
(レール・枕木画像:正規化後)
検出したい箇所に矩形を作図し、ラベル付けすることをアノテーションといいます。
遊間画像を収集し、アノテーションを付与します。
当初は、主に隙間が十分な遊間画像に対して、遊間の隙間部分のみを矩形で囲んでラベル付けしていました。
ただ、隙間が十分な画像だけのモデルでは隙間が狭いパターンの検出漏れが顕著で、新たに「遊間狭い」クラスを作成しました。
そこで、誤検出を抑える目的で、
し、ある程度隙間が確認できる「遊間標準」、画像で十分な隙間が確認できない「遊間狭い」の2種類のクラスで、遊間モデルを作成することとしました。
準備した500枚ほどの学習データを使って、YOLOv8遊間モデルを作成しました。
このモデルを使用して、対象路線全体の物体検出を行います。
次回以降で、遊間検出モデルでの実際の検出をご紹介していきます。
てんかく忍者
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南阿蘇鉄道株式会社
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▼この記事を書いたひと
R&Dセンター 渡邉 裕樹
位置情報、GIS関連が得意です。この道20年やってます。
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