「刑務所」と言えば、人生の中でなかなか行く機会がない場所ですね。
もちろん、誰も本物の刑務所に行きたくないですが、近年、監獄ブームもきているので(?)、今回は少し「ダーク」な旅として、日本で人気がある2つの監獄をお薦めしようと思います。
刑務所と言えば、湿気があり幽閉的な空間というイメージがあります。しかし、観光スポットに変身した刑務所はなかなか建築価値的に優秀で、博物館や美術館として、おしゃれ好きや撮影家でも楽しめる場所になっています。
もちろん、舎房に入って、暗い想像をしたい方もぜひご自由にっ!ほとんどの人はリアルに体験するチャンスが恐らくないはずですので。
まずお届けしたいのは、北海道の網走監獄の秋の様子です。
今年わざわざ時期を計算して撮影しに行きました。想像通り、絵になる「金色」が外国の友人に「世界一番きれいな監獄」と呼ばれ、名実ともに北海道の代表的な観光スポットです。
帯広から阿寒湖によって網走に向かい、現地に着いたのは既に午後になりました。
まずは監獄食堂で腹ごしらえっ!
ここの監獄食はサンマとホッケ2種類ありますが、予想以上に美味しかったですっ!
なんか、私の日常の食事よりも豪華で健康的で美味しくて...
東京ドーム3.5個分の大きさがある網走監獄には刑務所や舎房、見張り所だけではなく、耕耘庫や様々な漬物庫など日常感が溢れる施設も見学できます。
囚人たちは閉じ込められただけではなく、ちゃんとここで生活したと感じられます。
明治14年の樺戸集治監をはじめ、北海道の監獄は次々と作られ、ここの送られた囚人たちは当時この未開の地の開拓に大きく貢献しました。
悪人の贖罪とはいえ、さすがに何もなく、想像に超える過酷な環境です。雪の中でひたすら重労働により、丈夫そうな囚人でも「千人の中の二百人」という大きな犠牲が出ました。寒さに苦手な私にはとても耐えられません...
その人たちのおかげで、今私たちが風光明媚な北海道で遊べるようになっているんですね。
監獄の中には哨舎だけでもいくつかあり、逃げるのは、さぞ難しいことでしょう。
とは言え、日本数少ない有名な脱獄事件の2件ともここと関係しています。西川寅吉と白鳥由栄です。
西川寅吉は五寸釘の刺さった板を足で踏んでも十数キロを逃げきったので、「五寸釘寅吉」と呼ばれています。ここでは五寸釘まで展示されています。想像しても痛そうです!
もう一人の白鳥由栄は「昭和の脱獄王」と知られて、26年間の服役中4回も脱獄しました。特殊な身体能力と不屈な精神はもちろん、味噌汁で手錠と視察孔を錆びさせ外したことなどから見ると、化学や物理などにも詳しく頭が良さそうですね。
「博物館」という名前がついているので、展示物はその目玉の一つですね。
映像やメディアはもちろん立派に作られていますが、ぜひ注目してもらいたいのは監獄内の人形さんたちです。動ける人形さんもいますが、何より目立つのは、彼らのおしゃれな髪形ですっ!
一人一人顔立ちも違うし、犯罪者はちゃんと犯罪者の顔(?)をしていて、思わず写真を撮りたくなります。
館内では囚人の服を着用する撮影スポットなども用意されていて、ユーモア溢れますね。
因みに、今回私の北海道旅のテーマは「ゴールデンカムイ聖地巡礼」ですので、ここで一枚っ!作品の中の白石由竹のモデルは脱獄王の白鳥由栄ですので、メインスポットとも言えますね。
(館内にいろいろな人に話しかけられただけではなく、入場チケット売り場でまで「こんな格好の人が何組来ましたよ」と笑顔で言われました。)
現地に行くのが難しい方でも、ぜひ「博物館網走監獄 FAQ よくある質問」のページを読んで、ここのユーモアを感じてみてほしいです。「Q:お化けは出ますか?」「Q:今晩泊まれますか。」などの質問にもちゃんと答えていて、これこそ北海道道民のおもてなし心ですかね。
泊まれる監獄と言えば、楽しみにしているのが奈良の奈良少年刑務所(旧奈良監獄とも呼ばれている)です。
明治時代に築かれたレンガ造の監獄建築が丸ごと残る刑務所施設で、近年まで奈良少年刑務所として現役で使用されてきたものの、2017年3月末をもって閉鎖されされました。2021年に資料館やホテル等を備えた複合施設として開業する予定です。星野リゾートや無印良品などが参入し、3つのホテルが計画されてます。
ホテルより先に完成されたのは監獄史料館です。
現在、2019年11月23日(土・祝)、24日(日)開催する「監獄史料館プレオープン記念 奈良赤レンガFESTIVAL2019」のチケットも販売されています。
旧奈良監獄施設内の見学(指定コースのみ)や監獄史料館の見学、刑務所作業製品展示即売会などをお楽しみいただけるほか、特別イベントも御用意しております。ご興味がある方はぜひっ!
ここでも見学オープンの度に、様々な(監獄のイメージに相応しくないほど上品かつ楽しい)イベントが用意されています。去年は独房を貸し切りしてビールを飲んだり寛いだりする企画もありました。
大人気な施設ですので、私が行った時は予約時間帯であるものの、長列に1時間半の待ちでした。
旧奈良監獄は刑務所施設の近代化を目指した日本政府によって明治41年に築かれた監獄であり、同時期に築かれた千葉監獄・金沢監獄・長崎監獄・鹿児島監獄と共に「明治の五大監獄」と呼ばれています。
他の監獄は当初の建物はほとんど失われていますが、旧奈良監獄はほぼ完全に残る唯一の例として2017年に国の重要文化財に指定されました。
では、なぜそのような美しく近代的な刑務所が建てられたのでしょうか?。
実は明治時代、日本で罪を犯した外国人を日本国内で裁くことができない"治外法権"がありました。
その治外法権を撤廃するのが急務でしたが、当時の日本の監獄は木造で、設備も環境も世界レベルとは言えません。受刑者の「人権」を諸外国に言われないよう、まずは監獄や司法制度を西洋に合わせて整備し、近代化をアピールする必要がありました。
そのために、最新の西洋作りの旧奈良監獄が誕生しました。
今から見ても堅牢で美しい建物ですね。牢人になりたくないですが、少々羨ましくなります。
2年後に、大金を払ってここの高級ホテルに泊まる方々と、昔ここに無料で泊まった牢人たちを比べてしまいます。
余談ですが、実はダークツアーが大好きな私ですが、海外旅行の時でも必ずそういうちょっと暗い施設に見学に行きます。
では、海外の刑務所はどんな感じですか?
近年訪れた監獄の中で印象深い2ヶ所を一緒に見に行きましょう。
まずはオーストラリアのビクトリア州メルボルンにある旧メルボルン監獄です。
1929年に閉鎖されたビクトリア最古の現存する監獄で、現在は博物館として生まれ変わり、クチコミサイトでも高評価されています。
監獄は昔のままに保存されて、独房から拷問道具まで展示されています。
入場者はみんな最初から「囚人扱い」されて、いきなり「拘置所体験ツアー」が始まります。
広くないですが、とてもユーモアがある面白い体験型の博物館です。
地元では心霊スポットとされていますが、暗いオーストラリアの歴史を実感できる場所で、メルボルンに訪れる時はぜひ行ってみてください。
2010年にUNESCOの世界遺産に「オーストラリアの囚人遺跡群」の1つとして登録されたポート・アーサーもとても良い代表例だと思います。
18世紀から19世紀に、大英帝国がオーストラリアにいくつかの刑場を作りました。
ポート・アーサーはかつて最大の流刑植民地でした。さらに看守として凶悪な番犬と海のサメが活用され、「脱出不可能の流刑植民地」と呼ばれているので、多くの極悪犯がここに送られてきました。
19世紀末の火事で刑務所が焼かれましたが、現在建物は特に特に手を加えなく、当時のままに展示されています。(もちろんチケットは必要)
その「廃墟のまま」の姿は、博物館になった刑務所と一味違いますね。
私はどちらかというと、こちらのほうが気に入っています。
▼この記事を書いたひと
R&Dセンター 陸 依柳
撮影、お城、戦国、ICT、サブカルチャー...常に面白く、新しいものに惹かれるタイプです。地方の戦国イベントによく参加しています☆
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