成長戦略【vol.8】紙がリモートワークを阻害する問題は実は...

【vol.8】紙がリモートワークを阻害する問題は実は...

作成日:2020/05/27

新型コロナウイルスとリモートワークの話から始まって、今回は紙がリモートワークを阻害している?という問題が、実は、従来からのatomからbitへという"Being Digital"の話であったという与太話へ展開。

 

■紙が阻害するリモートワーク

色々なICTを使って、リモートワークで働き方改革!と言いながらも、それでも、外部からは紙で郵便物、社内便が回ってきますし、ロッカーに保管してある過去資料を参照しなければいけないケースもあります。
こんな時は、"業務が紙に依存しているかどうか?"が大きなポイントになりそうです。
「そもそも、紙を何故使いたいのか?」とここでも"そもそも"といった前提への疑いが必要ですね。

幸い私の部門であるR&Dセンターでは、毎日の仕事は、ほぼ紙不要で運営出来ていますが、それでも紙を使いたいというのは...

①何かを並べて比較したい
②成果品として紙を求められているから
③仕事へのインプットが紙だから

 

①は簡単です。電子データでも、マルチディスプレイや横長のディスプレイで並べられます。単純に解像度とワークエリアの面積の話です、図面の新旧を比較したり、誰かへの作業指示のために紙に出力して、付箋で...なんていうこともやっていそうです。これも図面データへのコメントやワークフロー機能が使えそうですね。

②は難しいですね。印刷関連の仕事、色の違いが出る仕事、大型図面への出力。当社の中でも、こういった仕事をしている部門では、なかなかリモートワークできない事情も理解できます。

③はどうしようもありません。お客様や協力会社とのやり取りが紙なら、紙を無くせそうにありません。これも当社の業務の主力だったりして、リモートワーク化を阻害している要因になりえます。
こういった"どうしようもない"業務も、(前後工程を含めて変えていく必要があり、難しいですが)本当にどうしようもないのかを考える機会かもしれません。

 

...というのも、企業間、企業と公共団体のやり取りがDX化していくのは必至で、いずれ紙であることを存在証明とする仕事は、電子化の波にさらわれることになるからです。

特に、アウトプットが物体である、印刷や製造のようなものではなく、情報加工業である当社にとっては、紙は製品ではなく、製品としての情報を載せる媒体(メディア)でしかない。

 

■だからといって"紙の電子化"だけが阻害要因ではない

電子データをやり取りする日常が一般化したとは言え、紙が無くなることは無いでしょう。(コピー機もスキャナもまだ出ています)
当社も電子化を事業にしていますから、無くなったら大変なことです。

しかし、電子化は過渡的な現象に過ぎないと思うのです。紙があるから電子化しなければいけないだけで、載せるのが情報である以上、情報が通信やコンピュータで行き来するご時世に、アナクロでしかありませんし、斜陽になっていくことは必然です。

アナログの写真技術がドキュメントの複製や効率に貢献したのは、当社操業時の話
デジタル化が進んだ90年代以降で、マイクロフィルムはマイナーになり、スキャナによる電子化やCADが当社の事業になりました。今はスキャナも個人で買わなくなり、大判の図面を大きなプロッターから出力する機会もめっきり減りました。

今や、ブック原稿や不定形のドキュメントを電子化するために、高精細なデジカメを代用している位です。(当社文化情報部にてギガピクセルのカメラで高精細スキャニングしています...がその話はまた別の機会にでも)

個人で紙を電子化する際にも、スマホでパチリと撮って、SMSなどで人に送るのが一般的ではないでしょうか。

"静止画をたくさん撮影してではなく、高精細な動画で撮影しちゃいましょう""360で周辺状況も含めて記録しちゃいましょう"というのは、R&Dセンターで進めている"土木建設業におけるDX化の提案"です。紙で出すことは全然、前提にしていません。

※そもそも360映像や動画は、わざわざ加工しなければ紙に出力できません

話がずれましたが、紙があるからリモートワークできないのではなく、そもそも紙にしているのはなぜですか?と問うたつもりです。

その昔「atomからbitへ」と未来を予測した人がいました。
(MITメディアラボ創始者のニコラス・ネグロポンテ氏が2001年の著書「ビーイングデジタル」で言及)

物理的な実体から、情報技術へ価値観が移っていくと、今でこそ"当たり前のことを"予言したわけですが。まさにコンピュータの仮想化も写真のデジタル化もコミュニケーションのデジタル化も、物体や人間が目の前にいることを前提にした価値観ではなくなっているわけです。

いうまでもないことですが、これは、ネットワーク上に人間の活動が移ってきた2000年頃からの、不可逆な変化です。

 

■AIが仕事をすることの意味

 

データサイエンティスト

人間が目で見て判断することやデータから規則性や気づきを得る分野は、画像認識、画像検出、物体検出、異常発見、データマイニング、機械学習、データサイエンスなどと言われています。

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データサイエンスやAIの技術者は、今、どこでも引く手あまたのドル箱職種のようです。

なぜでしょうか?

唯一の答えは、膨大なデータを事も無げに扱い、そこから得られる気づきやノウハウを自動化、複製できる人だからです。
彼らはコンピュータ世界の使者たちなのかもしれません。

彼らは直接的・間接的に、これまでの人の仕事を奪っていきますし、好意的に見れば、我々の(面倒くさい)仕事を無くしてくれる恩人になります。
早晩にAIに奪われるような仕事をしてきた人なのか、AIを操って仕事を改善する人なのか?
私たちに問われているのはそのことです。

 

業務をAI化するということ

"AIでなくなる仕事"で言及した通り、世の中ですべてデジタル(atomからbitへ)になるはずがありません。対面の交流も無くならないし、相変わらずモノを作らなければいけない。リアルエコノミーの方が、未だに、遥かに巨大であることは間違いがありません。

しかし、ホワイトカラー(事務職)の大半は情報を加工して生きています。元々物体を作っていないのですから、情報加工が仕事だと分かった以上、AIに置き換わっていくのは道理です。

下の図を見てください。
左は、人が1週間で仕事する時間を表しています。右はコンピュータが仕事をする場合です。
時間だけでも機械化(AI化)出来た仕事では、4倍の生産性を期待できることが分かります。
加えて、人が同じことをやるのと比較して、機械化された仕事では10倍(低く見積もったとしても)の生産性があるとしましょう。
稼働時間で4倍、時間当たりの生産性が10倍ならば、ざっと見積もっても40倍の生産性向上が見込めるわけです。

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人と人が会うことはプレミアムな体験でなければならない

"人と会うのが仕事だ"と昭和的感性ではそう言いがちです。
"人と会わなければ仕事できません"とか、
果たして本当でしょうか?


私たちは、店頭で実物を見て商品を買うことから、Amazonや楽天などの商品を手に取らないし、人とも合わない売買に慣れましたし、行ったこともない場所をGoogleStreetViewで確認することにも慣れました。
何かを決める際に、ユーザレビューやblogなんかを見て決めますし、売りたいがための営業トークやエビデンスに欠ける情報を信頼しなくなっています。

"Googleの人と会っていないのになぜかGoogleのサービスに依存し、Amazonのセールスマンに使えと薦められたのでもないのに、相手も知らずに、誰が作ったのか知らない製品を買っている"

あなたや、あなたの会社から、ユーザがサービスを受けようと思うのは何故ですか?本当にあなたやあなたの会社から買いたいと思っているのでしょうか?もっとうまく、安くやる他のプレイヤーが出てきたら、そちらでも良いのではないでしょうか?

人は直接会うことによって、購買動機になったり、信頼感を勝手に感じたり、一緒に生きている感じがあるだけだとしたら...そんなものは、お金に交換される価値を作っているといえるのでしょうか?

もし、そのことが言えるのなら、将来は"対面交渉代"とか"コンサルティング料"とか"成功報酬"とか"労働者管理費""クレーム処理代"とか金額を付けて、顧客に見積もり提示するのかもしれません。

対面で打ち合わせをして当たり前...といった感覚は、リモートワークによって変化してます。

むしろ豊富なデータや動画などを参照しながら、一人ひとりの話をきちんと聞けるリモート会議の方が、実はいいんじゃないか?

きちんとやる事を決め、納期が決められている仕事であれば、事務所にいなくたって自宅で出来てしまうことは既に分かってしまいました。

モノや情報の価値がデジタル化して流通する時代の新しいサービスの在り方が提案されたら良い。
"【Vol.2】当社の働き方改革 社長メッセージ"
にある通り、私たちに求められていることは、ただ一つ
「世の中に、どんな"価値"を提供できるのか?」だけです。

 

■残る仕事のヒント

人が人、人や動物が接すること(デジタルでは物足りない)がAI化されない仕事だと思います。
絶対的に言えることは、装置や製品、AIそのものを作る人は人間でしかありえません。
クリエイター、デザイナーも人間でしょう。機械が機械を作ったり、魚や野菜をAIや機械が作る時代も来るかもしれませんが、まだその片鱗はありません。

AIやリモートワークやRPA等など...ビーイングデジタルな世の中に、私たちは何をして生計を立てているのでしょうか?
DXとは物凄く程遠い所にあるブルーオーシャンがまだまだたくさん残っていると思います。

そのヒントは、今、新型コロナ下で、デジタル化もリモートワークもできずに、人のために働いている業態や職種の人の中にあると思います。

※1/2/3次産業がどこまで行ってもリアル経済なんじゃないでしょうか?

高架橋変状補修跡

 

▼この記事を書いたひと

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R&Dセンター 松井 良行

R&Dセンター 室長。コンピュータと共に35年。そしてこれからも!

 

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