社員がゆく第三回 広州国際文物博物館版権博覧会に出展しました

第三回 広州国際文物博物館版権博覧会に出展しました

2017年12月15〜17日に中国の三大都市の一つである広州市で開催された、第三回 広州国際文物博物館版 権博覧会に出展しました。中国の博物館のICTに関する市場調査などを目的に出展いたしました。 博覧会は、中国文物交流中心北京魯迅博物館の主催で、中国国内の主要な博物館グッズの開発やその版権問題や、様々な最新の展示手法の紹介などを目的として開催されるもので、今回は3回目にあたります。

その準備から、展示会の模様、中国国内のICTの利用状況などを、広東省博物館の視察内容も含めて、王莉莉がご紹介いたします。

広州国際文物博物館版権博覧会参加まで

11月1日に日中友好協会の専務理事である唐さんのご紹介で、広州で開催される博覧会への参加についてのお話をいただきました。その後、紆余曲折を経て社内から3名で現地対応する事が決定し、博覧会事務局担当者と、wechat*1(中国の SNS)を利用してのやり取りが、開幕直前まで続きました。展示ブースの壁面のデザインデータ送付や椅子、テーブル、カウンターなどの手配、印刷物の手配、オンラインでの決済などをwechatの音声会話を通じて行いました。

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展示会前日の準備作業と現地での展示ブースの設営確認のため、11月13日に日本を出発して、先に一人で現地入りをしました。会場は広州体育館という、町の中心部からはタクシーで30分ほどの距離にある場所です。

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14日の前日にもかかわらず、夕方になっても大規模なブースでは設営作業の真っ最中で会場内はホコリだらけ。一方、当社の展示ブースは順調に設営がすみました。これで一安心、ほっとしました。
この日の夜には他の日本からのメンバー2名、中国側の協力者である元南京市博物館館長の王興平先生、日中友好協会の唐専務理事と明日からの出展の最終打ち合わせを行いました。初日が、平日のため政府関係の方はこの日にブースに来られます。そのため、対応時間の確認や博覧会の公式行事の対応などについて打ち合わせをいたしました。

いよいよ開幕!

15日の朝8時過ぎに会場入りをしましたが、まだ設営作業をしているブースもありました。9時からの開幕に間に合うのでしょうか?
9時半にメイン舞台で、オープニングイベントが開催されました。日本ではとても考えられないような大げさな演出でした。

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展示会場には、とても1日で設営したとは思えないほどの手の込んだブースもありました。

作り込まれた展示ブース

北京大学考古文博学院

展示ブースの中でも、とりわけおしゃれで、大学の考古学科とは思えないブースでした。ここでは、中国の遺物に見られる文様を塗り絵風にアレンジした、子供向けの展示を通して、その意匠の意味などを紹介していました。中国に六館ある魯迅博物館は、主催者のブースだけあって洗練された展示ブースでした。

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広東省博物館

陶磁器のパズルをクリアすると、その場で缶バッチを作成してくれたり、wechatのQRコードを利用したプレゼントの人気が高いようでした。クーポンは、端末をパネルにあるQRコードにかざすと、その場で5元(約80円)や10元(約160円)のクーポンが貰えて、商品の購入時に割引が受けられる仕組みになっていました。

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安徽省地質博物館

展示は、HTCのViveを使ったVRによる地質の紹介コンテンツや、大型モニターを利用したアニメーションや紹介映像などで、ミュージアムグッズも多数出品していました。当社の隣のブースであることなどからとても親切にしていただきました。最終日には、当社の販売していたグッズを多数ご購入頂きました。

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清華大学

2016年4月にオープンした清華大学芸術博物館のミュージアムグッズや博物館の紹介をしていました。中でも、継手の技術を紹介するミュージアムグッズはとても精巧に作られていました。博物館のミュージアムグッズは専門の担当者が、民間と連携して企画しているというだけあって、とてもクオリティの高いものばかりでした。

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当社のブースにもたくさんの方に来ていただきました!

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当社のブースでは、技術紹介を中心に行いました。ブースの裏側では記念撮影ができとても好評でした。とくに、日本でのICTを活用した事例や、博物館の保存用機器、教育分野での活用事例などに関心が高いようでした。16日(土)と17日(日)は、一般の人に混じって、遠方の博物館関係者も大勢来場されていました。当社が名古屋市に本社があるのでその説明のため、名古屋コンベンションビューローに依頼して名古屋紹介用の中国語版パンフレットを持参しました。パンフレットは、二日目の午前中にはなくなってしまいました。そもそも、名古屋市の場所や名前なども知らないという方が多かった感じがしました。

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展示会でとても助かったのは、タクシーの配車システム「滴滴(didi)」*2と宅配システムの「餓了么」*3でした。滞在しているホテルから会場までのタクシーはこの配車システムを利用しました。目的地まで正確に確実に送り届けてくれます。しかも、乗車後にドライバーを評価する仕組みで、評価が悪いとドライバーはこのシステムから除外されてしまうようで、徹底したサービスの向上が図られる仕組みになっています。そのため、ドライバーもこのアプリを利用していない人を乗せることは、自身の評価につながらないので積極的ではないようです。また、宅配サービスは好みの食べ物を会場の入り口まで届けてくれます。様々なものが注文可能で、決済もオンラインのwechat payで簡単にできました。これにも味や配達スタッフの対応、時間の正確性など評価システムが連動しているため、サービスが非常によかったです。

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最優秀伝承賞を頂きました

当社のブースでは、ひっきり無しに関係者が訪れていました。どれも具体的な質問や、こういうものを中国に出荷できないかというものでした。そして、中日のクロージングの際に、最優秀伝承賞を思いがけず授与されました。賞には、四種類あり、最優秀展示賞、最人気ブース賞、最優秀アイディア賞、最優秀伝承賞があり、文化財保護や文化遺産に関する整理保存活用に重点を置いていることから当社に、最優秀伝承賞が授与されたとの事でした。ラッキー!

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蛇料理で祝賀会

最優秀伝承賞のお祝いに食事をしました。中国では、昔からの言い伝えで、「食在広州(食は広州にあり)」と言われているくらい広州はおいしい食べ物の地と言われています。日本では考えられないかもしれませんが、蛇、犬、子猫、猿、狸、トカゲ、サソリ、ネズミなど食材がとても豊富です。そんな中、展示会で立ちっぱなしで疲れていたこともあり、滋養強壮で有名な蛇料理を「富士山·鼎盛」という店に食べに行きました。これも、飲食店を評価するアプリで検索したお店で、広州市で人気ナンバーワンの蛇料理店です。ですが、サービスはイマイチでした。

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ICTを駆使した広東省博物館のシステム

王興平先生のご紹介で、広東省博物館*4の収蔵部責任者の黄静先生のもとを表敬訪問いたしました。当社の紹介と、広東省博物館でのICTを活用した取り組みの紹介を受けました。詳しい説明をしてくださったのは、情報部責任者の黄青松先生と笑顔の素敵な上級エンジニアの郭舒琳さんです。

博物館をリニューアルした2010年から、管理システムの構築を進めていて、もうすぐその3期目に入るシステムをご紹介頂きました。

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主要な機能としては、グループウェアによくあるポータル画面にスケジュール、TODO、ワークフローによる承認システム、貸出機能付きの収蔵品管理システム、wechat、weibo*3などのSNS連携、館内混雑状況モニタリング、展示施設内の人気度モニタリング、ホームページのアナリティクス機能、勤怠管理などがあるそうです。

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これらのシステムを、準備期間(2015年)、第1期目(2016年)、第2期目(2017年)と、国の補助金もあわせて毎年改善を重ねて、新たに構築したそうです。こうしたシステム化の背景には、年間150万人、1日最大5,000人にも及ぶ来場者が、どのように回遊しているかや、どこが人気のある展示なのかを数値化することで、次の展示計画に活かすことができるとのことでした。展示のスペースだけでも、日本の東京国立博物館のすべての展示面積を合わせたより少し広い約2万平米あるそうです。入館料は、特別展を除き基本無料です。システムの例をあげると、館内の混雑状況モニタリングは、Wi-Fi、Beaconを利用して15秒ごとにリアルタイムでカウントし、日毎や週間などの数は人によるアナログのカウントをあわせて数値化しているとのことでした。

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また、約16万6,000点にもなる収蔵品管理は画像とテキストによる通常の情報の他に、今後は現在の管理状況をモニタリングし、各収蔵品に最適な管理環境にあるかどうかも連動することが可能となるそうです。ちなみに、日本の国立博物館4館の合計の収蔵品の数は、12万7,453点(2017年3月31日現在)ですから、数だけを比較するとそのスケールに驚きます。

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また、他館への貸出も、収蔵品を選択し上司から承認を得る仕組みや、ホームページへの掲載許可もこのシステム上で行うことで、どの収蔵品をどの頻度で貸出しているか、ホームページなどへ掲載しているかの履歴も取っているとのことでした。博物館の担当者の個人まかせになってしまうところをシステムで補っているとのことでした。

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この他に、外国人対応について聞いてみると、来場者の殆どが中国人で、外国人は5%程度とのことで、今後多言語などの対応は考えていくとのことでした。音声によるガイドは、中国語と英語に対応した専用のガイドシステムの他に、wechatのシステムを利用したガイドにも対応していて、この利用状況もモニターしているとのことでした。

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担当の郭舒琳さんによると、新たに館を建てた時にそれにあわせてシステムを構築したので、こうした取り組みができたけれど、すでにあるシステム上にこうした考え方を取り入れようとすると、とてもこの期間ではできないでしょうね、とのことでした。

ー中国のICTの進歩はすごかったー日本人同行者の感想

私は中国出身なので特に感じませんでしたが、同行した上司は、このwechatのQRコードを利用したHPへの誘導や決済にも利用されていることに、驚いているようでした。展示ブースのポスターや、チラシなどにもこのQRコードが利用され、名刺の交換よりも、wechatのアカウントの交換のほうがスムーズだし相手と連絡も取りやすいからと皆さんこちらを利用されていました。最近は、社内の名刺を一元管理するようなソリューションも日本では出てきていますが、もうそのかなり先を行っている感じですね。

また、このスムーズな決済システムや、タクシーの配車サービスに慣れた中国人が日本に来たらどのように感じるか、「不便」どころではないかもしれませんね。

博物館でのICTの利用も積極的で、音声ガイドなどは独自のものを制作しているところもありますが、大きな流れとしてはこの巨大なwechatの仕組みに乗っかって展開したほうが、利用者にとっても「合理的」なんでしょうね。

同行した上司が、博覧会そっちのけでこの中国の合理的なシステムに関心を示していたのが印象的でした。

 


 

解説

*1.WeChat(微信;ウェイシン)
Tencent(騰訊)が2011年にリリースした、文字や音声、写真や動画、グループチャットなどでコミュニケーション通知など基本機能が出来る無料メッセージアプリで、Weiboなどと並び中国最大人気SNSの1つです。ユーザー数は2017年8月に発表された決算資料によると月間のアクティブ ユーザー が9億9,300万人に達したとの発表があります。世界でも最大規模の人気アプリです。中国人の日常メッセージはほとんどWeChatで行われており、スマートフォン・PCともに利用可能です。また、そのアプリ上で、ワンタイム(一時利用)のQRコードを使って店舗への支払いや、個人間送金などを実現する「WeChat Pay」もあるため多くの方が利用しています。

WeChat公式サイトはこちらから

*2.滴滴出行(didi;ディディチューシン)
北京市に本社を置く中国の大手ライドシェア企業で、中国国内で400都市の4億人以上のユーザーへ交通サービスを提供。サービスをスマートフォンアプリを通じて提供。Tencent(騰訊)とアリババの2社がそれぞれ支援しており、2016年8月1日にはUberの中国事業を買収しています。日本でも、第一交通と組んで、2018年春にも東京都内でサービスを開始するようです。

詳しくはこちらのgizmodoの記事がわかりやすいです。
滴滴出行公式サイトはこちらから

*3.宅配サービス「餓了么」(Ele.me)
2009年4月に設立された上海拉扎斯信息科技有限公司が展開中。2013年の売上高は約12億元(約240億円)。ファーストフード店や食堂の出前仲介をベースに、レストランとのつながりを活用してクーポン活用による集客支援事業を展開しています。

詳しくはこちらの「中国の出前アプリ「饿了么」、上海で見かける配送バイク!」の記事がわかりやすいです。

餓了么公式サイトはこちらから

*4.広東省博物館
1959年に設立され、2010年に建築面積4万平米、展示面積が2万平米、収蔵品が約16万6,000点の施設としてリニューアルオープンしました。設計は、国際コンペに勝った香港のRocco Design Architectsによるものです。建物の外観は、「珍宝容器」という中国古来の透かし細工の意匠を凝らした宝石箱のイメージだそうです。

広東省博物館
開館時間:火曜~日曜の9:00-17:00(入場整理券配布:8:50~16:00)
定休日:月曜(祝日や特殊な場合を除く)
入場券配布:8:50~16:00
入場整理券配布:8:50~16:00
注意事項
1、広東省博物館の入場料は無料ですが、入場者数には5000人/日の制限があるため入場整理券が必要となります。
2、館内では毎日午前10時と午後3時に中国語によるガイドツアーが行われます。

*5.Weibo:新浪微博(NASDAQ: WB;シンランウェイボー)
中華人民共和国・新浪公司の運営するミニブログサイトで、TwitterとFacebookの要素があり、中国全体のミニブログユーザーのうちの57%、投稿数にして87%を占めているそうです。
運営会社のSINA Corporationは2009年8月に発足し、2016年9月時点で全世界6億人以上ユーザーを抱える中国圏最大のソーシャル・メディアに成長しています。

Weibo公式サイトはこちらから

参考資料

次世代中国 一歩先の大市場を読む アプリが変えた中国人の行動パターン 情報共有が進み、効率化し始めた中国社会

スマホで物乞いも登場 第4次産業革命に走る中国、遅れる日本


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